欧州宇宙機関のHydroGNSSミッションがデータ提供を開始、地球観測プログラムScoutシリーズが実利用段階へ
ESA’s HydroGNSS mission begins delivering data, as the Earth observation program’s Scout series moves into practical implementation phase
2026-07-31
欧州宇宙機関(ESA)は、HydroGNSSミッションの観測データのユーザー向け無償提供を開始しました。HydoGNSS衛星2機は、2025年11月にローンチされた後、軌道上試験を経て通常運用へ移行しました。HydroGNSSは、ESAの新たな地球観測プログラムScoutの第1弾ミッションとなります。同ミッションのデータ提供開始で、Scoutプログラムは実利用の段階に入りました。
HydroGNSS衛星2機は軌道上で180度離れた位置に正対して運用され、GNSS反射法により土壌水分、凍結融解状態、バイオマス、湿地、浸水洪水、雪氷特性など、地球の水循環に関する水文学的データを取得します。GNSS反射法では、GPSやGalileoなどの全球測位衛星システム(GNSS)から発信されるLバンド電波信号の地表からの反射波を受信します。これに宇宙空間でダイレクトに受信する測位信号と併せて分析することで地表の水分指標を取得するものです。
観測に利用するGNSSのLバンド電波は波長が長く、植生や樹冠を透過しやすいこと、またHydroGNSSのコヒーレント・チャネル(Coherent channel)を使用することで、生い茂る森林など植生の下の河川・湿地や浸水域を高精度で観測することが可能です。コヒーレント・チャネルは、地表から鏡面反射(水面のような平面のきれいな反射)したGNSS電波を高レートで記録測定する観測モードです。
上に掲載した衛星画像の左はHydroGNSSのコヒーレント・チャネル、右はESAのSentinel衛星のCバンド・レーダー画像になります。SentinelのCバンド・レーダーでは、南米の密林地帯の植生を透過しての水量把握に制約がある一方、HydroGNSSのLバンド・コヒーレント・チャネルの画像は植生の下の水量を把握できていることが明らかです。このようにHydroGNSSなどのScoutプログラムの地球観測では、欧州のコペルニクスプログラムのような大型観測ミッションを補完し、データギャップを埋めることが期待されます。
HydroGNSSミッションの主契約者は、Surrey Satellite Technology Limited(SSTL、英国)です。SSTLは衛星製造、運用、データ提供までを担当しています。SSTLは、2025年6月にはScoutプログラムの別ミッション、NAIADの初期研究契約を獲得しています。NAIADは、内陸水域、沿岸水域の水質調査ミッションの提案となっています。
ESAのScoutプログラムは、比較的小規模な予算でスピード開発を重視した枠組みで、様々な地球観測を立て続けに実施する取り組みです。小型衛星を用いた観測ミッションで、原則として予算は総額3500万ユーロ以内、キックオフからローンチまでの開発期間は3年以内であることが要件となっています。
【参考】
Surrey Satellite Technology Limited
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【関連リンク】
Scout Missions (EO Programme, agile research)
